2014年3月1日土曜日

東方学院松江校 特別講座 第2回が開講されました。

大黒天の由来について語る加藤みち子先生
平成26年2月23日に、第2回東方学院松江校特別講座を開催しました。

今回のテーマは、中村元東方研究所専任研究員である加藤みち子先生による「摩多羅神(またらしん)と大黒天―天台系寺院伝来の神像から日本仏教を読み解く」です。

摩多羅神とは日本神道の系譜には現れない神様で、全国各地の天台系寺院の常行三昧堂に祀られています。第3代天台座主である慈覚大師円仁が、唐から帰る船中に突如現れ、日本に伝えられた神様といわれています。天台宗には、阿弥陀仏の周りを90日間念仏を唱えながら回り続ける、常行三昧という非常に過酷な修法があり、その修法が行われる常行三昧堂の阿弥陀仏像の裏側に祀られ、過酷な修行を続ける修行者を助けてくれる神様として祀られたのが、この摩多羅神なのです。

 日本の天台宗は、神仏習合に非常に積極的な立場をとっており、日本神道との習合以前から、様々な神を仏教の中に取り込んできました。摩多羅神と大黒天はどちらも日本古来の神でない点は共通しますが、人々に親しまれてきた大黒天に比べ、摩多羅神は秘仏としてひっそりと祀られてきました。しかしどちらも戦闘神→福の神、修行者の守護神→芸能の神と、日本においてその性格が変化しています。またさらに大黒天と摩多羅神を同一視する思想も生まれるなど、日本の天台宗とはこのように様々な宗教の神を積極的に取り込みながら発展し、日本仏教の方向性を形作っていったのです。
(研究員:秋鹿)