2013年9月19日木曜日

記念館閲覧室の新着図書


 記念館司書より、閲覧室の新着図書のご案内です!

                           『新装版インド哲学思想』全5巻 中村元 著 
                                         岩波書店 2012年11月発行

中段の4冊と上段中央の1冊です 
上段右の緑色の箱に全5巻が納められています
 

 中村元が大学院時代に研究課題として選んだインド哲学思想、その学位論文が「初期ヴェーダンタ哲学史」4部作として出版されたのは1950年代です。

 博士が20代の頃の5年をかけた研究の成果でした。23歳で召集され、病に倒れ大学へ戻った年から執筆が始められ、29歳の年に脱稿となったそうで、戦時中のため原稿用紙を入手するのにも苦労されたそうです。

 また、出版の時期が終戦前後と重なり、長い時間、出版されずにいたため、防空壕へ原稿を運んで避難されるなど大変な苦労の後に世に出た本でした。

後年に出版された「シャンカラの思想」が今回、それらに加えられ全5巻となりましたが、その元は大学院時代のノートに始まっているそうです。

戦争と貧困の苦難を乗り越えて、現在の私たちの時代に改めて出版された中村先生の本を、ぜひ手に取ってみてください。

 研究を始めるきっかけとなった中村元の恩師である宇井白寿が第1巻に「序」を記しています。宇井先生より、仏教を研究したいのなら、まずヴェーダンタ哲学をやりなさい、と勧めらたのが、研究のきっかけだったそうですが、その宇井先生の「序」が第1巻のはじめに載せられています。

記念館では展示室のガラス戸越しにしか見ることができない本でしたが、岩波書店さんから寄贈していただきましたので、どうぞご覧ください。新しい本のコーナーに展示中です。


 *4部作のうち、4巻目の「ことばの形而上学」には、4冊全部の索引が巻末についています。

(F)

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